「そんなこと、あるはずがない・・・」
「こんな夜中に、誰かがいる?・・・」
暗闇の中、私は握りしめていたiPhoneの時刻を見た
真夜中の12時を過ぎている
布団を払いのけた私は、急いで、トイレの灯りを点け、洗面台の鏡を見ないように目をそむけながら、洗面所と玄関の明かりを点けた
部屋の隅々まで明かりで満たされた
私は、1ミリたりとも暗闇が残っていないことに安堵した
ここは、数百羽のうさぎが住む大久野島
うさぎ達は寝静まり、休暇村の周りの灯りは全て消えている
島は、闇と静寂に包まれていた
私は、今度は静かすぎることが気になり始めた
『聞こえて来てはならぬ音、この世にあらざる音が、聞こえて来るのではないか・・・』
恐怖に取り憑かれた私は、リモコンを探してテレビをつけ、音量を上げた
12時を過ぎていたが、芸人さん達が旅をする番組の明るい笑い声が部屋中に響いた 大きな笑い声が魔除けになって守ってくれるような気がして、頼もしい
隣で眠っていたはずの母の怒鳴り声が聞こえた
「寝入りっぱなで起こされたんじゃ、眠れんようになるじゃないの」
母の怒りとは反対に、私は小躍りしたくなるほど喜んだ
母が起きたからには、一人でこの恐怖と闘わなくても良い
それに、母ならどんな悪霊からでも私のことを守ってくれる
私は、心の中で考えていることを気取られぬよう、殊勝な顔で、怒れる母の目の前にiPhoneをかざした 母に恐怖を肩代わりしてもらって、自分の重荷を少しでも下ろしたかった
母は、眼をこすりながらiPhoneの画面をのぞき込んだ
私のiPhoneは、休暇村の近くの※「ポケモンGO」のポケストップやジムを映し出していた
そして、私の震える指は、ゆっくりと、山の上にある「中央砲台のジム」を指した
母は、寝る前の記憶をたぐりよせていた
「これって、私が寝る前「このジム黄色だから、パパと私のポケモン、明日入れに行こう」って言ってた、あのジム、よね」
念を押すような母の声に、私はうなづいた
母は、iPhoneに映し出された時刻を見て、語気を荒げた
「こんな時間に、黄色から青に変わったっていうの?」
母の混乱する声が、恐怖でおかしくなりそうだった私の頭を少しクリアにした
「寝る前に、もう一度ポケストップを回してアイテムを稼いでおこうとしたら、中央砲台のジムから火花が散ってるのが見えて・・・こんな夜中に変だな、と思って見ていると、しばらくしてから、ジムの色が黄色から青に変わったんだよ」
休暇村から電波の届くポケストップは、3か所ある
しかし、休暇村から電波の届くジムは無い
(読んでいただき、本当にありがとうございます!申しわけありませんが、長くなるので、明日に続かせてください<(_ _)>)
(※ポケモンGOを楽しむ際に、自分の属するチーム(赤・青・黄色)が決まります
ポケモンGOの地図は、現実の地図上に仮想のポケストップとジムが配置されています ポケストップを回すと、無料でアイテムが手に入り、ジムでは自分のポケモンを配置することでポケコインを無料で入手することができます ただし、ジムに自分のポケモンを入れようとするときには、そのジムから電波の届く場所まで移動する必要があります その際、自分と同じチームの色のジムであるならすぐに入れます、しかし、違うチームの色であったなら、その中に入っているポケモンをバトルしてから追い出し、ジムを自分のチームの色にしてから自分のポケモンを入れることができるのです)